人の汗は汗腺より分泌されますが、ほぼ全身に分布するエクリン汗腺と、比較的特定部位に存在するアポクリン汗腺の2種類存在します。
エクリン汗腺は、口唇や亀頭など一部を除く全身の皮膚に存在し、手のひら、足底、わきの下に最も多くみられます。総数は約300万個と考えられています。
主に温熱刺激によって全身に発汗をきたし、体温調節を行っています。また、精神的緊張や味覚刺激によっても発汗します。1日に産生する汗は平均700~900mlといわれ、これらの発汗は交感神経(アセチルコリン作動性)に支配されています。
アポクリン汗腺は哺乳類の芳香腺が退化したもので、特定の部位(わきの下、外耳道、鼻翼、乳輪、へそ、外陰部)に多数存在しますが、数はエクリン汗腺より少なく思春期以降に発達します。主に情緒刺激で発汗し、汗は粘稠性で無臭ですが、皮表に出ると常在細菌によって分解され臭気を帯びるようになります。腺の発達がホルモンと関係していることから、性機能との関連が考えられています。これらの発汗は交感神経(アドレナリン作動性)に支配されていると考えられています。
多汗症
エクリン汗腺の機能が亢進しており、手のひら、足の裏、わきの下、顔面などの体の一部に限局性に多汗がみられます。多くは情緒性発汗であり、体質や精神的緊張が関与する場合が多くみられます。
わきの下の多汗症に対しては交感神経の伝達をブロックする保険適用外用薬をまずは試してみますが、改善が難しい場合や他の部位に対しては以下のような治療を組み合わせてみます。
当院では外用剤として制汗消臭クリーム(D‐bar)、10%・20%塩化アルミニウム液を用意しています。
症状が重く、外用剤で効果が出ない場合は、ボトックス注射による治療を考慮します。
(※「重度の原発性腋窩多汗症」に対するボトックス注射による治療は、保険適用になりました。)
わき下用制汗消臭クリーム(スティックタイプ:D‐bar)
制汗、消臭作用を持つミョウバンと抗菌作用のあるイソプロピルメチルフェノールが配合されています。市販のデオドラント製品で効果が感じられない人にお勧めです。
わきの下に1日1回の外用で効果が期待できます。
10%・20%塩化アルミニウム液
塩化アルミニウム液は制汗作用があり、特にわきの下には有効です。作用機序は明確にはされていませんが、アルミニウムイオンが汗中のタンパク成分と凝固物を形成して汗孔を閉塞することや、エクリン汗腺自体を変性、萎縮させることなどが考えられています。わきの下だけでなく、手のひらや、足底にも使用できます。通常1日1回の外用で効果が期待できます。
ボトックス注射
最も強力な制汗作用があります。発汗を支配する交感神経の伝達をブロックすることにより、発汗を抑制します。1回の施術で、効果は約4ヶ月~半年間持続します。
重度の原発性腋窩多汗症に対してのみ、保険適応が認められています。
(重症度については、来院時の問診で判断いたします。)
手順としまして、まず来院していただき、注射の適用があるかについて問診します。
適用がある場合は、施術の方法、効果などについて説明を受け、同意書にサインし、施術日の予約をとっていただきます。
(※同意書をいただいてからの薬剤の取り寄せとなるため、必ず予約をとってからの施術となります。)
費用について
料金(税込) | |||
制汗剤 | |||
塩化アルミニウム液(10%)50ml | 1,650円 | ||
塩化アルミニウム液(10%)100ml | 2,750円 | ||
塩化アルミニウム液(20%)50ml | 1,980円 | ||
塩化アルミニウム液(20%)100ml | 3,300円 | ||
腋窩制汗スティックD-bar(15g) | 1,650円 |
※当院では自費診療においてクレジットカードのご利用に対応しております。