顔面の「しわ」や「たるみ」は年齢を重ねるにつれて誰もが避けては通れないものですが、その成因や要因にはいくつかの種類があり、お顔の部位によっても異なってきます。
ここでは、主に加齢や環境によって発生する「しわ」と、表情によって発生する「しわ」について説明します。
「しわ」や「たるみ」の発生メカニズム
「しわ」と「たるみ」は連動して生じるため、合わせて説明します。
「しわ」や「たるみ」ができる範囲として、次の2つが重要です。
- ①皮膚そのものの加齢や紫外線や乾燥による変化(組織的要因)
- ②皮膚の折曲げや収縮、伸展の繰り返しによる変化(物理的要因)
①は、誰にでも起こる退行性変化であり、皮膚や皮下組織、筋肉、靭帯、骨などの変性、拘縮などによる機能低下が挙げられます。
具体的には、真皮層の膠原線維(コラーゲン)の不均一化、弾性線維(エラスチン)の変性、真皮の細胞間基質の変化、皮下脂肪織の減少、腱膜や靭帯の機能不全、骨の萎縮などが関わってきます。
特に、真皮層の膠原線維と弾性線維は皮膚のハリと弾力性の保持を担っているため、これらの機能の衰えや真皮細胞間基質の変化などは、しわやたるみの形成に直結します。
また、顔面骨格と皮膚軟部組織とをつなぎ止める支持靭帯が緩んでくると、皮下脂肪組織のパーツ(脂肪体:fat pad)が下垂するため、たるみが生じます。
また、皮下脂肪織や顔面骨格の萎縮により余剰となった皮膚はたるみとなります。
たるみが生じると、皮膚がよれた部位にしわが形成されます。
②は、基本的によく動く部位を中心として発生します。特に、目周りにおける眼瞼の開閉や、眉毛の運動、口、顎の動きに関わる表情筋の収縮や拘縮が関わってきます。
こちらも誰にでも発生するものですが、加齢によって表情筋が衰えたり、支持靭帯が弱ってくると元に戻りにくくなり、形が付いてしまうと元に戻らなくなってしまいます。
その他、重力による下方向への力も関わってきます。
「しわ」の分類について
しわの深さはその成因や、組織学的にどの深さまで障害されているかで決まってきます。細かいしわ(小じわ)は、組織学的に真皮の上層(乳頭下層まで)の変化で形成されますが、やや深くなったしわや、深く刻まれたしわ(中~大じわ)は、真皮の中~下層(網状層以下)まで変化が及んで形成されます。
また、皮下の脂肪体が下垂すると境目に溝が形成され、徐々に深いしわになっていきます。
少し異なった成因として、表情を作った時に現れるしわ(表情じわ)があります。これは、表情筋の収縮によるものですが、筋肉の方向と垂直な方向に形成されます。繰り返されるうちに静止時にも刻まれるしわに発展していきます。
当院での「しわ」のに対する治療について
「しわ」のレベルや成因によって治療も変わってきます。ここでは「中程度~大じわ」と「表情じわ」の治療について説明します。
「小じわ」については、「肌の若返り(リビジュネーション)」のページをご覧ください。
①中程度~大じわ
機器を用いて真皮層や皮下組織に熱を送り込んで、線維を収縮、増生させたり、再構築を促進させる施術や、真皮層の再構築を促進させる薬剤を導入する施術や、陥凹した皮膚の溝や、減少・萎縮した組織を充填する薬剤が適応となります。
■ ヒアルロン酸を注入することで、減少した組織成分のボリュームアップや支持靭帯を補強してリフトアップさせたり、しわや陥凹を目立たなくすることでお顔全体の若返りを図ります。
■ 先端のチップに極細の針が多数装着されたペン型デバイスを使って皮膚に無数の小孔を開けることで、創傷治療過程による皮膚の活性化、再構築を促進します。
薬剤を併用することで、導入することも可能です。
■ 皮膚の浅い層に組織を再生させる効果のある薬剤を広範囲に注入することで、真皮層の増生、再構築を促進し、お顔全体の若返りを行います。
■ 真皮層の線維芽細胞を活性化させる薬剤を注射器やデバイスを用いて注入することで、真皮内のコラーゲンやエラスチンを増殖させ、皮膚を盛り上げることで毛穴やニキビ瘢痕やしわを修復します。
■ マイクロニードルを皮膚内部に挿入して、その先端からの高周波(RF)照射により、真皮内に確実に熱凝固層を形成することで、真皮の引き締め、活性化、再構築を促進します。
■ エルビウム・フラクショナルレーザーによって、極小のレーザー光を高密度で照射し、表皮、真皮の活性化、再構築を促進します。
■ ピコ秒レーザーを特殊なレンズでフラクショナル化させて照射することにより、衝撃波によって組織を損傷させ、傷創治癒過程による表皮、真皮の活性化、再構築を促進します。
■ ハイフ(HIFU)と呼ばれる技術により、超音波を用いて熱エネルギーを皮膚内部の皮下組織や筋膜に与えることにより、組織の変性をおこすことで線維成分の収縮、増殖を促し、お顔のリフトアップやたるみ、しわの改善、部分的な引き締めを行う施術です。
①表情じわ
表情じわを抑制するには、原因となる表情筋を弛緩させて収縮できなくする方法があります。また、早めに対策を行っておくことで、将来のしわの形成を予防することもできます。
■ 表情じわの原因となっている表情筋にボトックスを注射することで、筋肉を弛緩させ、しわを目立たなくしたり、予防することができます。