「肝斑」とは?
肝斑は30歳以降の女性に好発する特殊な「しみ」です。
淡褐色斑が顔面の頬部を中心に左右対称性にみられ、目の周りには現れないことが特徴ですが、口囲や前額部にみられることもあります。まれに男性にみられることもあります。
原因はまだはっきりしていませんが、表皮の微弱な慢性炎症による色素沈着の可能性があり、悪化する原因として紫外線、女性ホルモン、繰り返される洗顔時の摩擦などが考えられており、季節性、年齢的変動があることも特徴です。
症状は長期間続くため、女性を悩ます”しみ”の1つです。
「肝斑」の特殊性
色が季節性、年齢的に変動するだけでも特殊ですが、肝斑の特殊性はその治療にもあり、他の色素性病変に効果的なQスイッチレーザーや、IPL(フォトフェイシャルなど)が使えないところにあります。
照射すると、メラノサイトが刺激を受け、メラニンを増強させるため、悪化してしまいます。
よって、肝斑に対してレーザーなどの光治療を行うためには、以下のような照射法を行う必要があります。
・肝斑の原因となっている表皮内のメラニンのみを破壊または排出を促す
これに対応した照射法として最初に登場したのが、1064nmのQスイッチYAGレーザーを低出力で用いる「レーザートーニング」です。YAGレーザーはパルス幅が5nsとQスイッチレーザーの中では最も短くなっているため、周辺組織への熱ダメージを防ぐことができます。
また、2013年以降にはさらに短パルス幅となったピコ秒レーザーが登場しました。ピコ秒レーザーでは、Qスイッチレーザーと比較して、極端に短いパルス幅が生み出す衝撃波としての光音響作用がメインに働くため、より低出力でのメラニン破壊が可能となり、周辺組織への熱ダメージもさらに減少させることができます。
ピコ秒レーザーを低出力で照射する方法は「ピコトーニング」と呼ばれています。
ただ、いずれの方法も低出力であるため、メラニンの量を減らすためには1回の施術では不十分であり、施術回数を重ねる必要があります。
光治療以外の方法としては、美白外用剤、美白内服薬、ケミカルピーリングやイオン導入などが効果が期待できます。これらを組み合わせたり、光治療と併用することも可能です。
当院での「肝斑」の治療について
大きく、レーザー機器を使用する方法と、それ以外の治療方法に分けられます。これらを組み合わせることもよくあります。
レーザー機器を使用する方法
当院では、「エンライトンSR」を用いた”ピコトーニング”と、「スペクトラ」を用いた””レーザートーニング”を行っています。
■ 1064nmの波長、750psのパルス幅のピコ秒レーザー(エンライトンSR)を用いて行うピコトーニングです。お顔全体に照射することで、お顔全体のトーンアップと、若返り(リジュビネーション)効果も期待できます。
■ 1064nmの波長、5nsのパルス幅のQスイッチYAGレーザー(スペクトラ)を用いて行うレーザートーニングです。お顔全体に照射することで、お顔全体のトーンアップ効果があります。
なお、スペクトラによるレーザートーニングの後に、続けてお顔全体に肌質改善を目的とした「スペクトラピール」(1064nmのロングパルスYAGレーザーを全顔に照射)を行う、「デュアルピール」をお勧めしています。
その他の治療方法
その他の治療としては、美白内服薬(特にトラネキサム酸+ビタミンC)はエビデンスもある効果が期待できる治療法です。
また、美白外用薬や、表皮内のメラニン排出を促進する目的でケミカルピーリングやハイドラフェイシャルも効果が期待できます。
また、当然日々のケアとして肝斑の増悪因子である紫外線を防いだり、洗顔時やメークを落とす際の摩擦にも十分注意が必要です。