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アトピー性皮膚炎

アトピー性とはどんな病気?

アトピー性皮膚炎とは皮膚表面の角質層の異常にともなって、皮膚の乾燥とバリア機能異常という皮膚の生理学的異常があるために、色々な物質に対して多彩な非特異的な刺激反応や特異的なアレルギー反応が起こることによって、慢性に経過する炎症とかゆみをともなう湿疹・皮膚炎群の一疾患です。

アトピー性皮膚炎の患者様はアトピー素因と言われる以下のような特質を持っていることが多いことがわかっています。

  • 自分や血のつながっている親族(両親、兄弟、祖父母)がアトピー性皮膚炎や、他のアレルギー疾患(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎)をもっていたり、その既往がある。
  • 様々な物質に対してIgE抗体と言われる即時型アレルギーに関係する抗体を産生しやすい。

これが、日本皮膚科学会の定めるアトピー性皮膚炎のガイドライン(表1参照)におけるアトピー性皮膚炎の定義ですが、少しわかりにくいかと思います。もう少し簡単に言い換えると、以下のような文章になります。

「生まれつき皮膚が弱いために、すぐにかゆみの強い湿疹ができて、よくなったり悪くなったりを繰り返しますが、なかなか治りません。また、自分も含めて、家族・兄弟に同じアトピー性皮膚炎や他のアレルギー疾患を持った人がいたり、血液検査でアレルギー検査を行うと、色々な物質で陽性になりやすい傾向があります。」 


表1:アトピー性皮膚炎の定義
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アトピー性皮膚炎の発症の病因とは?

いまだにアトピー性皮膚炎の発症メカニズムは十分には解明されていませんが、次の3つの要因が関与していると思われます。

Ⅰ:皮膚の生理機能異常  Ⅱ:免疫学的要因  Ⅲ:外的要因

Ⅰについては、皮膚のバリア機能の低下(アミノ酸などの天然保湿因子やセラミドなどの角質細胞間脂質量の低下)や、発汗異常皮膚血管反応の異常などのアトピー性皮膚炎特有の皮膚異常がみられます。また、2006年にアトピー性皮膚炎の患者の約30%でフィラグリンという角質細胞の角化に必要な蛋白質をコードする遺伝子に変異がみられることが報告されました。このフィラグリンは分解されてアミノ酸などの天然保湿因子といわれる皮膚の保水、紫外線吸収などを行う物質になりますが、この遺伝子異常によるフィラグリン産生低下も、皮膚のバリア機能低下の一端を担っていると考えられます。


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Ⅱについては、生まれもっての要因や、皮膚バリア機能の低下にともなって、リンパ球のバランスや反応性に異常がみられます。リンパ球の中のヘルパーT細胞にはタイプ1(Th1)タイプ2(Th2)があり、いずれも免疫反応に関わっている重要な細胞です。通常はバランスをとりあって相互作用していますが、アトピー性皮膚炎や他のアレルギー性疾患はいずれもTh2細胞が優位になっています。
アトピー性皮膚炎では、TARC(thymus and activation-regulated chemokine)というケモカインの一種が、皮膚表面の様々な刺激によって角化細胞から産生され、Th2リンパ球を皮膚病変部に呼び寄せることで炎症を増悪させることが知られており、皮膚の炎症の重症度に相関して血清中のTARC値も変動するために、血液検査により重症度を客観的に数値化して評価することもできるようになりました。

また、アトピー性素因で述べましたが、色々な物質に対してIgE抗体と言われる即時型アレルギーに関係する抗体を産生しやすく、血液検査でも色々な項目でIgE値が高くなる傾向があります。(ただしアトピーの重症度と血清IgE値には相関はないとされています。)

★血清TARC値や血清IgE値測定によるアレルギー検査はいずれも保険適用となっています。アレルギー検査については、36項目が一度に測定できるMAST36をお勧めしています。

Ⅲについてはダニ、ハウスダスト、動物の毛、カビ、汗、乾燥、精神的ストレス、湿度などの様々な外的因子が湿疹の悪化の原因になります。


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アトピー性皮膚炎の症状と経過について

まず、アトピー性皮膚炎の症状ですが基本的には湿疹なので、「皮膚が赤くなる、細かいぶつぶつができる、じくじくする、かさかさする、ぽろぽろはがれる、かたくなる」などで、いずれも強いかゆみを伴います。

また、症状は体の左右で同じように現れやすく、おでこ、目の周り、口の周り、首、手足の関節、胸や背中などに現れます。このような症状が一時的なものではなく、長期間(ガイドラインでは乳児では2ヵ月以上、その他では6ヵ月以上)続く場合アトピー性皮膚炎と診断されます。

また、年齢によって症状に特徴があり、一般的には乳幼児期(4歳まで)、小児期(思春期まで)、成人期(思春期以降)に分けられます。

乳幼児期
症状が顔や頭に現れやすく、かゆみの強い湿疹が生じ、細かいぶつぶつができて盛り上がったり、じくじくと液がしみ出してきたりします。
小児期
症状がひじの内側やひざの裏側などに現れるようになります。皮膚は乾燥してかさかさと皮がむけ、かゆみを伴います。耳切れもよくみられます。
成人期
広範囲にわたって顔面や上半身に治りにくい湿疹がみられ、皮膚の乾燥が強くなり、ごわごわと厚くなります。長期間湿疹が続くことで、色素沈着がみられることがあります。


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次にアトピー性皮膚炎の経過ですが、一般的には年齢とともに軽快していくと考えられます。経過としては次の4パターンが考えられます。


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自然寛解(症状が落ち着いて安定した状態)に関しては2、3歳頃からみられ、8~9歳頃で50%、16歳には全体の約90%が自然寛解したとの報告もありますが、アトピー性皮膚炎の予後に関する調査は少なく、明確には不明です。
アトピー性皮膚炎の年代別の有病率については報告があり、以下のグラフのようになります。年代が上がるにつれて有病率は減少しており、やはり年齢とともに寛解していく可能性が高いと考えられます。ただし、重症の割合は年齢が高いほど増える傾向があり、結局軽快に至らなかったものがそのまま成人になって重症例として残っていることが考えられます。

また近年は、思春期・成人期になっても軽快しない例や、成人発症例が増加していることが報告されています。

  
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アトピー性皮膚炎の治療について

まず、アトピー性皮膚炎の治療の目標ですが、もともと皮膚が弱いところに原因がありますので、完全に根治させるということは難しいところがあります。ただ、適切な治療を行い、普段の日常生活でも悪化因子をできるだけ取り除くことで、皮膚の炎症が少しずつよくなり、最小限の薬で症状が落ち着いた状態を維持することができるようになります。

そのため、治療の目標として次のように設定します。

  • (1) 症状はないか、あっても軽症であり、日常生活に支障がなく、
       薬もあまり必要としない。
  • (2) 軽微または軽度の皮疹は持続するが、急激に悪化することはまれで、
       悪化しても長引くことはない。

という状態をめざします
アトピー性皮膚炎の治療は、病気そのものを完治させる薬はないことから、

  • Ⅰ:皮膚の炎症を抑える治療
  • Ⅱ:普段からのスキンケア
  • Ⅲ:日常生活における悪化因子の除去

の3つの方法を中心に行います。
炎症を抑える治療としては、ステロイド外用薬タクロリムス外用薬を中心とした治療を行い、かゆみが強い場合は飲み薬を併用します。炎症が治まった後は、保湿薬を使ってスキンケアを続け、皮膚のよい状態を維持します。悪化因子は問診や検査などから慎重に判断し、できるだけ取り除くようにします。

Ⅰ.皮膚の炎症を抑える治療

症状が強い部位にはステロイド外用剤が最も効果があります。ステロイド外用剤には弱いものから強いものまで5段階に分類されており、皮疹の重症度や部位によって塗る薬のランクが変わってきます。ステロイド外用剤についてはその副作用を心配される患者様もいらっしゃると思いますが、正しい使い方をしていれば問題はありません。当院ではその点には十分配慮して、塗り方や回数についてもしっかり説明しております。

ステロイド外用剤についてくわしく知りたい方は、「ステロイド外用剤について」をご覧ください。

また、タクロリムス外用剤(プロトピック軟膏)は免疫抑制剤が含まれた塗り薬ですが、ステロイドとは異なった機序で炎症を抑える作用があります。また、特徴としては皮膚の悪い部位からしか吸収されないため、長期間使用しても副作用が出にくいことが挙げられます。ステロイド外用によりある程度炎症が落ち着いた中等度以下の症状に適応があり、顔面によく使用されますが、近年は全身に対しても外用が推奨されています。

また、ステロイド外用とタクロリムス外用のコンビネーション療法(下図)によりステロイド外用の使用量を少なくしたり、症状が良くなった後にも定期的・間欠的にステロイド外用やタクロリムス外用を週に2、3回継続して行うことで再発予防になるというプロアクティブ療法(下図)も最近勧められています。(これに対して、症状が改善したらステロイド外用を完全に断ち切って、保湿剤のみに変更して、また再燃してきたらステロイド外用を再開する方法をリアクティブ療法と言います。)

  
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皮疹を軽快させるのはステロイド外用剤やタクロリムス外用剤ですが、かゆみが強いと引っ掻いてまた悪化させてしまうことがよくあります。かゆみの程度は患者さんの感じ方などによって違いますが、いずれにしてもかゆみを減らすことは大切な治療の一つです。かゆみがひどくてイライラしたり、十分に眠れない時などは、かゆみを抑える目的で抗アレルギー薬などの飲み薬を用いることもあります。

Ⅱ:普段からのスキンケア

アトピー性皮膚炎の患者さんは皮膚のバリア機能が弱く、保湿成分が欠乏しているために乾燥肌であり、抗原(異物)や微生物などが侵入しやすく、これらは炎症を起こす原因になります。スキンケアによって皮膚が健康な状態に保たれると、さまざまな悪化因子の影響を受けにくくなり、症状がまた出るのを予防することになります。スキンケアの基本は皮膚を清潔に保つことと、乾燥を防ぐために保湿剤を塗ることです。

まず、皮膚を清潔に保つために毎日の入浴・シャワーが重要です。シャンプー・石鹸は低刺激、敏感肌用を用いて、洗浄力の強いものは避ける必要があります。汗や汚れは強くこすらないようにして速やかにおとします。シャンプー・石鹸は残らないように十分にすすぎます。高い温度のお湯につかったり、入浴剤は避けるほうがよいかと思います。

また、保湿剤ですが入浴後はなるべく早めに必ず塗ります。また、何回塗っても問題ありませんので、少しかさついてきたと思ったら、また塗りなおします。軽い炎症のみなら保湿剤で治ってしまうこともあります。

Ⅲ:日常生活における悪化因子の除去

「アトピー性皮膚炎の発症の病因とは?」にも書きましたが、悪化因子となるものはたくさんあります。すべてを除去することは困難と思われますので、できる限りで気をつけるというスタイルが大事だと思います。

例えば、室内環境ではこまめに掃除し、ダニやほこりの発生を少なくする環境を整えることが大切です。また、ダニの発生しやすいじゅうたんや布製の家具などはできるだけ避け、寝具類の取り扱いにも注意が必要です。また、室内は風通しをよくして、適温、適湿を保つようにすることも重要です。汗をなるべくかかないように、できるだけ涼しい環境づくりを心がけます。夏は適宜冷房を使用し、冬は暖房をきかせすぎないようにします。また、ペットを飼うこともできればやめておくほうが無難です。

また、衣類の材質にも気を配る必要があります。木綿素材などの肌触りのよい衣類を着用する必要があります。
洗濯の際は、洗剤のすすぎ残しがないように、すすぎをしっかり行うことが大切です。

また、心理的ストレスは重要な悪化因子の一つと考えられています。環境の変化、クラスがえ、試験、家族や友達、周囲の人との人間関係のトラブルなどで心理的ストレスがたまると、それに反応してホルモンが分泌され、アレルギー反応を起こしやすくなると考えられています。なるべくストレスをためないように、自分なりのストレス解消法を身につけることが大切です。また、規則正しい生活、睡眠時間をしっかりとる、疲れた時は休養するといった生活習慣を心がけましょう。

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