「Qスイッチレーザー」とは?
「レーザー治療について」で詳しく説明しましたが、SP理論に基づく色素性病変のレーザー治療では、①波長 ②照射時間(パルス幅) ③照射エネルギー の3つの条件が重要となります。
色素性病変の原因であるメラニンを選択的に効率よく破壊するためには、メラニンに吸収されやすく、周囲の血管への障害を避けるためにヘモグロビンには吸収されにくい波長の光を用いる必要があります。
なおかつ、周囲の組織への熱障害を最小限にするために、メラニンの熱緩和時間に相当するナノ(10-9)秒レベルのパルス幅の光を発振できるレーザー機器を用いる必要があります。
このような条件に適する波長をもち、超短パルスの光を発振できるレーザーのことをQスイッチレーザー(Quality-switched Laser)と言います。
現在、色素性病変専用に販売されているQスイッチレーザーは3種類あり、いずれも色素性病変に対する効果は高いですが、波長やパルス幅が異なるため全く同じではありません。
また、保険適用がある機器とない機器があります。
「Qスイッチアレックスレーザー」の特徴
当院では主にQスイッチアレックスレーザー(波長755nm、御アルス幅50nsec)を使用しますが、真皮内深部のメラニンでも破壊することができます。
また、照射スピードが5ショット/秒まであり、照射口径も2、3、4mmと選択できることも特徴です。
また、遅発性両側太田母斑様色素斑(ADM)、太田母斑、異所性蒙古斑、外傷性刺青に対して保険適用があります。
Qスイッチレーザーは、1回の施術の効果は高いですが、メラニンに対する衝撃が強いために照射後は照射部位に薄い痂皮(かさぶた)が張り付くことが多く、脱落するまで1~2週間のダウンタイムがあります。
また、照射部位の損傷度合いや、照射後の処置の方法などにより、その後の経過にバリエーションがあるため、アフターケアをしっかりと理解する必要があります。
「Qスイッチレーザー」の良い適応について
Qスイッチレーザーは1回の施術の効果は高いですが、1~2週間のダウンタイムがあるため、特定の部位の「しみ」の治療には適していますが、広範囲の散在した「しみ」には向いていません。
なお、肝斑には衝撃が強く照射後の色素沈着が増強する可能性が高く、禁忌となっています。
また、深在性の色素性病変であるADM、太田母斑、異所性蒙古斑、外傷性刺青や、黒~青色系の刺青も適応となります。
適応
老人性色素斑、雀卵斑(そばかす)、扁平母斑(茶アザ)
遅発性両側性太田母斑様色素斑(ADM)、太田母斑、異所性蒙古斑、刺青
単純黒子(小型のほくろ)
(※ALEXレーザーを用いる場合、ADM、太田母斑、異所性蒙古斑、外傷性刺青は保険が適用となります。)
よく見られる顔面のしみです。Qスイッチレーザーにより、一か月後にはほとんど目立たなくなっています。
顔面に大型のしみ(老人性色素斑)が散在しております。Qスイッチレーザーにより、2カ月後にはわずかな赤みは残っておりますが、シミの原因であるメラニン顆粒はほぼ脱落しています。
顔面のしみです。レーザー照射後、かさぶたができますが、約10日後には剥がれ落ちます。
その後、色素沈着になることがありますが、徐々にうすくなっていきます。
手首や手背などの露光部位にもしみはよくみられますが、Qスイッチレーザーで目立たなくすることができます。
施術の流れ
まずは一度来院されて、カウンセリングを行ってから、施術日を決定します。
-
カウンセリング
- まずは診察を行い、適用があるか判断いたします。Qスイッチレーザーを希望された方には、その原理や治療効果、施術後の経過などについて説明いたします。同意書に署名をいただき、施術日を決めていただきます。
来院後の流れ
-
施術
- (以下施術日)
麻酔のシールを剥がしてから、希望部位にレーザーを照射します。
照射部位の面積によりますが、通常1~数分で終了します。
-
冷却
- 照射後はアイスパックで少し冷却してから、軟膏を塗ってテープでカバーして終了です。
よくある質問、注意事項
- ・痛みはありますか?
- 当日、麻酔のシールをあからじめ貼って来院していただくので、個人差はありますが気になるほどの痛みは通常ありません。
(ただし、深在性の色素性病変の場合は多少の痛みは感じる場合があります。) - ・日常生活に支障はありますか?(ダウンタイム)
- レーザー照射部位には約10日~2週間、褐色調のうすい膜状のかさぶたが張り付くので、軟膏の概要と茶テープまたはガーゼによる保護をおこなっていただきます。
なお、患部の洗顔は直接行っていただいても大丈夫です。 - ・かさぶた脱落後の経過と注意点について
- かさぶたが脱落後の幹部の色調によってその後の経過も変わってきます。詳細は診察時に説明しますが、約2週間~1ヶ月後に炎症後色素沈着が出現するケースが見られます。
- ・炎症後色素沈着について
- 皮膚が損傷を受けた場合に治癒過程でメラノサイトの機能が一時的に増強しメラニンを産生する皮膚の生理現象で、一過性に患部が褐色調になります。レーザー照射後にもみられることがあり、皮膚のターンオーバーとともにメラニンは徐々に排出されるため、褐色の色調も徐々に消退していきますが、損傷の度合いや紫外線などの日常生活の影響を受けるため、その期間は一定ではありません。また、炎症後色素沈着にレーザーを照射すると悪化することが多いため、行いません。
- ・施術回数、期間について
- 通常のしみやそばかすに対しては、1回の施術でも効果的です。経過が良好な場合は追加照射の必要はありません。炎症後色素沈着が出現した場合も時間の経過とともに消退していく場合が多く、経過観察となります。
ただし、深在性の色素性病変の場合は約半年~1年の間隔を開けて複数回照射が必要な場合もあります。
費用について
施術内容 | 料金(税込) | ||
自費初診料 | 3,300円 | ||
自費再診料 | 1,100円 | ||
Qスイッチアレックスレーザー・QスイッチYAGレーザー | |||
シミ | |||
5×5mm以下(1個につき) | 5,500円 | ||
10×10mm以下 | 11,000円 | ||
20×20mm以下 | 22,000円 | ||
(複数個ある時は面積の合計で計算) | |||
ソバカス | |||
分布や個数によって要相談 | |||
テスト照射 | 2,200円 | ||
麻酔 | |||
エムラクリーム麻酔 | 2,200円 | ||
キシロカイン注射麻酔 | 880円 | ||
麻酔テープ1枚 | 220円 | ||
茶テープ(小)10枚入り | 220円 | ||
茶テープ(大)8枚入り | 330円 | ||
ロコイド軟膏(自費) | 440円 | ||
リンデロンVG軟膏(自費) | 440円 | ||
ゲンタシン軟膏(自費) | 440円 |
※表示はすべて税込価格です。