通常の皮膚科診療です。当院では乳幼児から高齢者までの幅広い年齢層の皮膚疾患、皮膚のトラブルの診療を行っております。
湿疹、アトピー性皮膚炎、ニキビ、水虫、ウイルス性のイボ、じんま疹、帯状疱疹、巻き爪や、小児に多いとびひ、水イボ、ウイルス性の発疹などの頻度の高い疾患から、乾癬、膠原病、リンパ腫、皮膚癌にいたるまで、あらゆる皮膚科疾患を対象とします。
また、ホクロなどの色素性病変や腫瘍に代表される皮膚のさまざまなできものに対しても、手術やレーザーでの切除、組織検査を行っております。陥入爪の根治手術であるフェノール法も行なっています。また、太田母斑や異所性蒙古斑などの“青アザ”や外傷によって皮膚内部に色素が残ってしまった外傷性刺青に対しては、保険診療でのレーザー治療を行っています。また、重度のわき下の多汗症に対する保険診療でのボツリヌス製剤の注射も行っております。
また、難治性の尋常性乾癬、尋常性白斑、掌蹠膿疱症、アトピー性皮膚炎のかゆみなどに効果的な、エキシマライトを用いた中波紫外線治療も行っております。
- ステロイド外用剤について
- 紫外線と皮膚について
- 難治性アトピー性皮膚炎に対する注射薬
- 難治性慢性特発性蕁麻疹に対する注射薬
- アレルギー検査(MAST36)
- ウイルス性イボに対するTCA(トリクロロ酢酸)治療
- 帯状疱疹予防のワクチン
湿疹(通常の湿疹・脂漏性湿疹・かぶれなど)
湿疹は皮膚科を受診される患者さんの中で、最も頻度が高い疾患であり、かゆみの強い赤い斑(紅斑)、かさかさした皮膚(鱗屑)、ぶつぶつした盛り上がり(丘疹)などが主な症状ですが、掻いているうちにじゅくじゅくしたり(びらん)、水ぶくれ(水疱)や膿だまり(膿疱)を作ったりします。時間経過により多様な臨床像を呈することが特徴です。
湿疹の原因としては、外的因子(外部からの異物、刺激など)と、内的因子(皮膚の健康状態や遺伝的な特質など)が絡み合って発症すると考えられます。原因がはっきりしない(特定できない)ことも多くみられますが、原因としてある要因がはっきりしている場合や、症状にある程度共通の特徴がはっきりしている場合もあり、これらには特定の病名がつけられているものもあります。以下に頻度の高いものをご紹介いたします。
- 接触皮膚炎(=かぶれ)
原因物質の接触部位に限定して湿疹反応が生じます。掻いたりして原因物質が散布した場合は広範囲に皮疹が出ることもあります。発症の様式から、“刺激性接触皮膚炎”と“アレルギー性接触皮膚炎”に大別されます。 - アトピー性皮膚炎
頻度の高い湿疹の一種です。アトピー性皮膚炎の項をご覧ください。 - 脂漏性皮膚炎
頻度の高い湿疹の一種です。脂漏性皮膚炎の項をご覧ください。 - 貨幣状湿疹
足や体を中心に、数cm大の円形や楕円形のかゆみの強いかさかさした紅斑を呈します。 - 自家感作性皮膚炎
下腿などにあった湿疹病変(原発巣)が急速に悪化した後に、しばらくして全身に細かく水っぽい丘疹や膿疱が多発(id疹)してかゆみを伴います。内在性アレルギー反応(id反応)が原因と考えられています。 - うっ滞性皮膚炎
下腿に静脈不全による静脈瘤や、むくみ(浮腫)がある場合に、湿疹や黒褐色調の色素沈着を来します。皮膚は外部からの刺激に弱く、ちょっとした外傷などで皮膚の潰瘍に発展します。 - 皮脂欠乏性湿疹
頻度の高い湿疹の一種です。皮脂欠乏性湿疹・乾皮症の項をご覧ください。 - 汗疱
手掌や足底に小さい水ぶくれが多発してかゆみを伴います。汗との関係ははっきりしていません。
当院での治療
湿疹の基本的な治療としましては、いずれの疾患もステロイドの外用が基本であり、かゆみを抑える目的で抗アレルギー剤の内服等を行います。予防としては、保湿剤などによる日常における皮膚のケアが重要となります。
湿疹全般についてのより詳しい説明は、こちらをご覧ください。
なお、ステロイド外用剤につきましては、副作用が心配だという声もよくきかれますので、正しい理解が必要です。
ステロイド外用剤についての詳細については、こちらをご覧ください。
アトピー性皮膚炎
前述の湿疹の一型ですが、特徴的な臨床症状をとる慢性湿疹であり、その定義や治療法はガイドラインによって詳細に定められています。幼児~小児期に発症することが多く、患者の多くは家族歴(両親や祖父母にアトピー性疾患の既往あり)や、アレルギー性鼻炎や喘息などの疾患も併せ持つことが多く、また様々な物質に対して、IgEと呼ばれる抗体が作られやすいという性質を持っており、これをアトピー素因と言います。
患者の多くは、学童期までに軽快もしくは治癒することが多いですが、一部は成人になっても症状が続いて、難治性の慢性湿疹となり、特徴的な臨床像をとります。
アトピー性皮膚炎の発症原因として、免疫学的要因による皮膚の炎症と皮膚バリア機能異常の相互作用が重要であることが認知されつつあり、皮膚バリア機能に関わるフィラグリン遺伝子の異常や、皮膚炎の形成に関わる重要な炎症性物質も多数発見されており、今後はそれらをターゲットとする治療が期待されています。
当院での治療
治療としましては、通常の湿疹と同様に保湿剤による日々のケアと、皮疹の重症度に応じたステロイドの外用が基本です。ただし、慢性的な経過をとり再発も多いため、薬の塗り方の工夫や、保湿剤による予防についてしっかりと指導する必要があります。
また、ステロイドではないタクロリムス外用剤や、JAK阻害剤であるデルゴシチニブ外用剤や、PDE4阻害剤であるジファミラスト外用薬を使用することもあります。
外用剤の効果が乏しい部位や痒疹結節に対しては紫外線(エキシマライト)の照射が効果的なこともあります。
また、通常の外用治療では改善が困難な重症例にはシクロスポリン製剤の内服や、皮膚炎の形成に関わる炎症性物質の作用を直接抑制する抗体製剤である注射薬(デュピクセント® 、ミチーガ®、アドトラーザ® 、イブグリース®)による治療も行っております。
また、できるだけ皮膚が刺激を受けないような周囲の外的因子、環境因子の整備、日常生活の改善についても指導できればと思っております。
脂漏性皮膚炎
前述の湿疹の一型ですが、脂漏部位と言われる皮脂腺の多い部位(顔面や頭部やわきの下など)にかさかさした紅斑が出現します。頭部に発症すると、最初はフケが多くなるくらいですが、悪化すると頭皮に硬く分厚いかさぶたがこびりついてきます。かゆみは少ないことが多いです。乳児期にも一過性にみられますが、思春期以降の成人に発症した場合は、慢性に経過することが多く、再発もよくみられます。
原因は遺伝や環境による皮脂の成分、分泌量や、皮膚にもともと住んでいるマラセチアというカビの一種による皮脂の分解産物による刺激が悪化因子の1つとされています。
当院での治療
治療は、ステロイド外用が効きますが再発も多いため、抗真菌剤の外用や皮脂の代謝に関わるビタミンの内服などを併用します。脂漏部位の清潔や、抗真菌成分配合シャンプーの使用なども予防に重要です。
皮脂欠乏性湿疹・乾皮症
加齢や入浴時の洗いすぎが原因で、皮膚表面の皮脂や汗の分泌が低下した状態を乾皮症といいます。
この状態の皮膚はバリア機能が低下しているので、外的な刺激を受けやすくなっており、刺激性の湿疹を呈した状態を皮脂欠乏性湿疹と言います。
秋~冬期の乾燥しやすい時期に高齢者の下腿によくみられます。
当院での治療
治療としては、湿疹が生じた場合はステロイド外用剤を用いますが、乾皮症に至る前の予防が大切であり、皮膚をしっとりさせる保湿剤をうまく利用したスキンケアが重要になります。
じんま疹(蕁麻疹)
突然、膨疹といわれる強いかゆみを伴った盛り上がった赤い斑が出現しますが、数十分~数時間であとかたなく消退したり、場所が移動したりすることが特徴です。
原因がはっきりしていて再現性がある場合と、原因がはっきりしていない場合があり、様々なタイプに分類されますが、頻度としては原因がはっきりとしない特発性のじんま疹が大多数を占めます。
当院での治療
主に抗アレルギー剤の内服によって治療します。通常は1週間程度で治まりますが、場合によっては長引くこともあり、慢性じんま疹に移行する場合があります。
難治性の場合は数種類の抗アレルギー剤を併用したり、増量することもあります。
また、重症例で日常生活にも支障がでる場合は、ステロイド剤内服や抗IgE抗体注射薬ゾレアの注射による治療も行っております。
通常、特発性の場合は検査等は不要ですが、状況によっては採血によるアレルギー検査を行うこともあります。
ニキビ(尋常性ざ瘡)
ニキビはほとんどの人が経験しますが、思春期に顔面を中心に、前胸部、背部などの脂腺の発達した部位に好発する毛穴に一致した炎症性の皮膚疾患です。臨床的にはプツプツした盛り上がり、白い膿だまりや、痛みを伴う赤く硬い盛り上がりなど多様です。基本的に、治りにくく、再発も多いため、慢性的に経過することが多く、悩ませられる疾患です。
原因としては毛穴のつまり、皮脂腺の亢進、毛穴の常在菌であるアクネ桿菌(P.acnes)による感染・炎症に加え、遺伝性因子、年齢、食事、ストレス、化粧品などの外的因子が絡まって発症します。
当院での治療
治療としては、睡眠、食事、正しい洗顔などの日常生活の改善とともに、薬物療法を行います。外用治療としてはピーリング剤と言われるレチノイドや過酸化ベンゾイル(BPO)の外用剤、抗生物質の外用剤を組み合わせます。塗り方にコツがあるため、その指導が重要になります。
また、それと併せて体質改善をねらったビタミン剤や漢方の内服や、中等~重症例では抗生物質の内服を行います。抗生剤にもいろいろ種類があり、その選択が重要になります。
ニキビは慢性的な経過をとることや、再発も多いため、継続的な治療が必要となります。そのためには、ニキビに対する理解を深めて治療に対するモチベーションを低下させないことも重要となります。
また、当院では保険治療と組み合わせて以下のような保険外治療を組み合わせることもできます。(詳しくは各施術のページをご参照ください。)
★ニキビや脂性肌の改善に有効的な保険外治療
ニキビは顔面という目立つ部位に好発するため、どうしても整容的な問題がでてきます。炎症をもったニキビは赤みが目立ち、治療が遅れると治癒後も赤身や色素沈着が長時間持続することもあります。また、炎症が強かったり、何度も繰り返していると瘢痕と呼ばれる凹凸の傷跡を残して治癒することもあります。これらの整容面の改善のために保険治療に加え、保険外治療を組み合わせることもできます。
以下に有効的と思われる保険外治療を挙げてみます。
(詳しくは以下のページを参照ください。→「ニキビ・ニキビ跡の改善」)
①「ニキビ」に対する全般的な治療
②「ニキビ」の赤みに対する治療
③「ニキビ」の赤みに対する治療
④皮脂分泌抑制、角化正常化による治療
酒さ・酒さ様皮膚炎
「酒さ」は、顔面に生じるびまん性の紅斑(赤ら顔)や毛細血管の拡張、ニキビ様の丘疹などを主症状とする慢性的な炎症性疾患であり、臨床症状によりいくつかの病型に分類されます。
臨床症状が類似する他の皮膚疾患が多く、誤診されている例もよくみかけます。
臨床的に多く見られるのは、紅斑毛細血管拡張型(第1酒度さ)と丘疹膿疱型(第2度酒さ)です。
病因はまだ不明な点も多いですが、近年は外界異物に対する皮膚表面の最初の防御反応である「自然免疫機構」の亢進により、様々な外的・内的刺激(紫外線、温熱、アクネ桿菌・毛包虫感染、飲酒、刺激物摂取、ストレスなど)に対する感受性が高まって発症するというストーリーが推測されています。
この自然免疫応答には個人差があるため、体質もかかわっていると考えられます。
また、他の皮膚疾患や誤診によりステロイド外用薬やタクロリムス外用薬を継続して使用している場合に酒さと類似症状が出現することがあり、この場合「酒さ様皮膚炎」と言います。特に口囲に限定して症状が強い場合は「口囲皮膚炎」とも呼ばれます。
当院での治療
「酒さ」は一般的に慢性の経過をとり難治性ですが、第1度と第2度酒さに対してはメトロニダゾール外用薬やテトラサイクリン系抗生剤の内服が有効である場合が多く見られます。
また、紫外線や刺激物の摂取、飲酒、ストレスなどの増悪因子の抑制も重要です。
「酒さ様皮膚炎」では、まずは原因と考えられる免疫抑制外用剤を中止して「酒さ」と同様の治療をおこないます。この際一過性に症状が増悪するリバウンド現象が見られますが、その後、改善にむかいます。
水虫・その他の皮膚真菌感染症
水虫(白癬)
水虫は白癬菌という真菌(カビ)の一種が皮膚表面の角質層に感染することで発症します。症状としては皮膚がめくれたり、小さい水ぶくれや、かかとの角質肥厚などとして現れます。
症状が進むと、かゆくなったり、じゅくじゅくしたり、趾間が切れたりしてきます。
足底や趾間に発症する足白癬が最も一般的ですが、足の付け根(そけい部:股部白癬)や体幹、四肢(体部白癬)、頭皮(頭部白癬)に感染することもあります。
特殊な状況としてペットからうつる場合や、柔道などの格闘技をやられている方に好発するタイプもあります。
また、足の爪の中に感染する(足爪白癬)は難治性です。
診断には剥離した皮膚を顕微鏡で調べて、必ず白癬菌を確認する必要があります。
(自己判断で市販の水虫薬を外用することをはおすすめできません。)
また、類似疾患にカンジダ菌や癬風菌といった他の真菌が感染、増殖する場合もあります。これらの疾患でもやはり顕微鏡で菌を確認してから診断する必要があります。
カンジダ性皮膚症
真菌の一種であるカンジダ菌が皮膚や粘膜に感染して引き起こされる皮膚疾患で、白癬菌同様に様々な部位に感染します。皮膚が擦れ合う部位(外陰部、ワキの下、乳房下、手指間など)に生じることが多いですが、口腔内(鵞口瘡)や爪や膣内に感染することもあります。
カンジダ菌は白癬菌と異なり、口腔内や膣内に常在していますが、様々な原因により増殖することで発症します。
澱風(でんぷう)
真菌の一種であるマラセチア菌が皮膚に感染して引き起こされる皮膚疾患で、高温多湿な夏季に若者の前胸部や背部に好発します。数cm大の円形の淡い褐色斑が多発したり融合すること(黒色澱風)が一般的ですが、白色調の脱色素斑になること(白色澱風)もあります。
当院での治療
一般的には抗真菌外用薬で治療しますが、しばらくの期間はしっかりと外用することが大事です。ただ、爪の中に感染する爪白癬や、足底のかかとにできる角質増殖型足白癬の場合は抗真菌内服薬が必要となることもあります。また、他人にうつしたり、再発を防ぐための日常生活での注意点も指導する必要があります。
単純ヘルペス・帯状疱疹
いずれもヘルペス疹といわれるまわりに発赤を伴うドーム状の小さい水ぶくれが集まった皮疹を形成し、ピリピリとした痛みを伴うことが特徴です。ヘルペスウイルス族に属する単純ヘルペスウイルス(HSV)と水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)ウイルスによる感染症で、主に体の中にもともと潜んでいるウイルスの再活性化により症状が出現します。これらは全く別々のウイルスであり、異なった疾患です。
単純ヘルペスウイルス感染症
単純ヘルペスウイルスにはⅠ型とⅡ型がありますが、成人でよく見られるのはⅠ型の再活性化より口唇周囲に発症する口唇ヘルペスといわれるものです。また、アトピー性皮膚炎の人によく見られる小水疱が広範囲に多発するカポジ水痘様発疹症もⅠ型によるものです。Ⅱ型は性器ヘルペスとして発症することが多く、外陰部に再発を繰り返します。
帯状疱疹
帯状疱疹の原因である水痘帯状疱疹ウイルスは小児期の水痘(水ぼうそう)と同じ原因ウイルスですが、再活性化により2度目は帯状疱疹を発症します。強い痛みを伴うことも多く、後遺症として“帯状疱疹後神経痛”といわれる痛みが残存することもあるため、早期の治療が望まれます。特に顔面に発症した場合、重篤になることがあり、注意が必要です。
当院での治療
単純ヘルペスの場合はヘルペスウイルスの特効薬である抗ウイルス薬の内服、または外用を行います。帯状疱疹の場合は抗ウイルス薬の内服が必須です。その他、発疹に対する外用薬や、痛みに対して鎮痛剤の内服を行います。急性期の痛みが帯状神経後神経痛に移行しないように、定期的に診察いたします。
もし、神経痛に移行する兆候がある場合は、神経痛に対する内服薬を処方することもあります。また、顔面に発症した場合は、適宜眼科や耳鼻科と連携することもあります。
ウイルス性イボ(尋常性疣贅)
足底、手指、顔面などの露出部によくみられる表面がざらざらした盛り上がった突起物を呈することが 多く、原因としてHPV(ヒトパピローマウイルス)が皮膚表面の基底細胞に感染することによって発症し ます。放置すると大きくなったり、周囲の皮膚に感染して数が増えることも多く、早期に治療することが望まれます。
当院での治療
治療としては、液体窒素による凍結療法が一般的ですが、1回で治ることは難しく、通常は定期的に処置を行うことになります。痛みを伴うこともつらいところではありますが、現段階で最も治癒する可能性が高いとされています。ただ凍結するだけではなく、増殖した角質を削ってから処置を行うことが重要です。イボに良いとされる漢方の内服や角質を薄くする外用を併用することもあります。
当院では難治性のイボに対して、TCA(トリクロロ酢酸)の塗布治療もおこなっております。
虫刺症(虫さされ)
蚊、ブヨ、アブ、ハチ、蛾の幼虫(毛虫)などの昆虫に刺咬されて生じる皮膚の炎症の総称です。類似疾患として、イエダニやツメダニによるダニ刺症や、クラゲによるクラゲ皮膚炎、ムカデによるムカデ刺咬症なども同様です。特殊なものとして、ヒトヒゼンダニによる疥癬(かいせん)や、マダニよるマダニ刺咬症があります。
臨床症状が特徴的なケースや状況証拠が明らかなケースでは原因がはっきりすることもありますが、特徴のない場合は推測にとどまることもよくあります。
疥癬やマダニの場合は、特殊な治療が必要になるため、見逃さないように努力する必要があります。また、ハチやムカデの場合にアナフィラキシーショックを起こすことがあるため、注意が必要です。
当院での治療
通常は皮膚の炎症を抑えるステロイド外用剤で治療しますが、症状が強い場合はステロイドの内服を行うことがあります。
疥癬の場合は、イベルメクチンの内服やピレスロイド系の外用を行う必要があります。他人への感染力が非常に強いため、日常生活の指導も併せて行う必要があります。
マダニの場合は、ボレリアによるライム病発症予防のために抗菌薬の内服も必要となります。
皮膚細菌感染症
皮膚科における細菌感染症とは、皮膚表面や粘膜の常在菌や外部から付着した細菌が、毛穴や汗腺、外傷部などから皮膚内部に侵入することで発症します。炎症が起こる皮膚の層の深さによって、臨床症状も変わってきます。感染が成立して発症するには、細菌が増殖する必要がありますが、これには細菌の菌量や毒性の強さ、宿主の免疫や防御能力の強さなどが関係してきます。
ここでは、外来でも比較的よくみられる疾患をとりあげます。
毛包炎
毛包(毛穴)から侵入した細菌が、皮膚の浅い部位で増殖して炎症を生じたものです。毛穴に一致して紅斑や膿疱(膿だまり)がみられ、軽い圧痛を伴います。顔面のニキビも同様の病変ですが、顔面以外の場合は原因菌が表皮ブドウ球菌や黄色ブドウ球菌などであることがニキビとは異なります。
通常、数日間で跡形を残すことなく治癒します。多発するときは、抗生剤の外用や内服を行うこともあります。
癤(せつ)、癰(よう)
いわゆる“おでき”と言われるものです。「毛包炎」と同じく毛穴の炎症ですが、さらに進展したものであり、皮膚の深い部位まで炎症が拡大したものです。厳密には1つの毛包に生じた病変を“癤”と言い、さらに拡大して隣接した複数の毛包に拡大した病変を“癰”と言います。
臨床的には毛包炎よりも発赤、痛みが強く、盛り上がって硬結(しこり)を形成します。数日〜数週間で徐々に軟らかくなり、膿瘍(膿だまり)になってきますが、やがて破裂して排膿すると症状は改善してきます。その後、わずかな瘢痕(傷跡)を残して治癒します。
鑑別として、粉瘤という袋状のできものに感染が加わった“炎症性粉瘤”がありますが、治療は同様です。
細菌性爪囲炎
手指や足趾の爪の周囲の皮膚に化膿性炎症が生じたものであり、“瘭疽(ひょうそ)”とも言います。爪周囲の皮膚に発赤や痛みを伴います。治療は感受性のある抗生剤の内服や外用ですが、状態によっては針で穿刺して排膿させることもあります。頻度としては細菌感染がほとんどですが、特殊な場合としてヘルペスウイルスや、カンジダなどの真菌が原因となることもあります。
蜂窩織炎
外傷や皮膚の潰瘍、足白癬のジュクジュクした病変などから続発的に細菌が皮膚の真皮層〜皮下脂肪層に侵入して、急速に周囲に拡大して発症します。原因菌としては黄色ブドウ球菌が多いですが、他の細菌が原因となることもあります。
臨床的には下腿に発症することが多く、境界がはっきりしない紅斑が面状にみられ、腫脹や強い圧痛を伴います。リンパ管に沿って中枢側に炎症が拡大することもあり、この場合は線状に紅斑がみられます(リンパ管炎)。悪化すると発熱や関節痛などの全身症状を伴うこともあり、歩行困難となり入院が必要となる場合もあるため、早期の治療が必要となります。
さらに悪化して筋膜まで炎症が拡大すると、「壊死性筋膜炎」と言われる重篤の疾患に進展することもあり、注意が必要です。
丹毒
細菌、特にA群β溶連菌が皮膚の真皮層に沿って化膿性炎症を引き起こした疾患であり、外傷や慢性的な静脈不全をきっかけに発症します。臨床的には顔面に生じることが多く、突然顔面の片側に比較的境界がはっきりした圧痛、熱感を伴う紅斑、腫脹が出現して、徐々に反対側にも拡大していきます。発熱やリンパ節腫脹も伴います。病態的には前述の蜂窩織炎と類似しますが、病変の層がやや浅めであると考えられています。
静脈不全がベースにある場合は、丹毒を繰り返す場合もあり、「習慣性丹毒」と呼ばれます。
当院での治療
いずれの疾患も、原因菌に感受性のある抗菌薬の内服、外用をおこないます。
“癤”や“癰”では、膿がたまった状態で波動を触れる(ブヨブヨしている)場合は、局所麻酔下にメスで切開して排膿させることもあります。
“蜂窩織炎”や“丹毒”では、早期の治療が必須です。臨床症状が強い場合や全身症状を伴う場合や血液検査による炎症値が異常高値を示す場合は、入院して点滴治療を勧めることもあります。
薬疹・中毒疹
内服や点滴によって体内に取り込まれた薬剤やその代謝産物が原因となって、皮膚や粘膜に発疹が現れることがありますが、これを“薬疹”と言います。
病型として、一般的な通常型の薬疹の他、SJS、TEN、DIHSなどの重症型の薬疹、固定薬疹や手足症候群などの特殊型の薬疹に分類されます。頻度的には通常型の薬疹が圧倒的に多く見られます。
症状としては通常型の場合、特に決まったものはなく、あらゆるタイプの皮疹が出現する可能性がありますが、最もよく見られるのは、播種状紅斑丘疹型と言われるほぼ全身に対称性に赤い斑やブツブツが出るタイプです。
また、原因となる薬剤もあらゆる薬剤の可能性があり、発症機序にもよりますが各個人により異なりますので、決まったものはありません。ただ、頻度の高いものは抗生物質と解熱鎮痛剤です。
皮膚科専門医であれば、見ただけで「薬疹っぽい感じ」がわかる場合が多いですが、全身性のウイルス発疹症などとは鑑別が困難な場合もあり、薬剤の投与歴や発症までの時間経過などを詳細に確認して診断する必要があります。(薬疹やウイルス発疹症を含めた全身性の発疹症のことを、まとめて“中毒疹”と呼ぶことがあります。)
発症までの時間経過としては、固定薬疹以外では最低でも3日以上はかかることがほとんどであり、病型によっては2週間や1ヶ月後くらいに発症する場合もありますので、注意が必要です。
当院での治療
まずは原因薬剤の中止が最も重要です。発疹に対してはステロイドの外用や抗アレルギー剤の内服を行いますが、全身症状を伴う場合や重症型薬疹に移行する可能性のある場合は、ステロイドの全身投与や入院を考慮する場合もあります。
物理的皮膚障害(熱傷・凍瘡・外傷・褥瘡など)
皮膚の重要な機能の1つとして、温熱や寒冷や紫外線や放射線などの物理的刺激や外傷や圧迫などの機械的刺激から生体を防御する働きがあります。しかし、一定の閾値を超えた刺激を受けた場合には皮膚はダメージを受けることになります。
高温による皮膚障害として“熱傷(=やけど)”、寒冷による皮膚障害として“凍瘡(=しもやけ)”や“凍傷”、紫外線による皮膚障害としては“日光皮膚炎(=日焼け)”や“光老化”を発症します。また、外傷の場合は受傷の状況や傷の深さによって様々なタイプの創傷となり得ます。また、持続的な圧迫による皮膚の血流の循環障害により、“褥瘡(=床ずれ)”を発症します。
ここでは通常の診療で比較的よく見られる物理的皮膚障害について取り上げます(紫外線の皮膚障害については、「紫外線と皮膚」をご参照ください)。
熱傷(=やけど)
熱傷は障害を受けた皮膚の深度(深達度)によって、Ⅰ度(表皮層レベル)、Ⅱ度(真皮層レベル)、Ⅲ度(皮下組織レベル)に大きく分けられます。これらは熱源の温度や接触時間によって決まってきますが、“低温熱傷”のような特殊な状況下での熱傷もよくみられます。深達度や受傷した面積はもちろん、治療方法によっても治癒経過や期間が大きく変わってきます。時代によっても治療方法が変化している部分もあり、皮膚科専門医が最も得意とすべき分野ではないかと思っております。
まずは、受傷直後は受傷部位を冷水などでしばらくの間(できれば数十分)冷却していただいて、早めに受診していただくのがよろしいかと思います。
なお、重症熱傷と言われる全身管理が必要な広範囲の熱傷や、気道熱傷を伴う場合や、電撃熱傷、特殊な化学物質による化学熱傷の場合は、早急に熱傷管理ができる大学病院などで入院治療を行う必要があります。
外傷
通常の診療でよく見られるのは、包丁やカッターなどで切った場合にできる“切創”や、包丁で削いだ場合や、転んだり、擦りむいた時にできる“擦過創”です。受傷した皮膚の創の状態により、初診時の対応や治療方法や治癒までの経過も変わってきます。当然、浅い傷や面積が小さい傷は治るのも早いですが、深い傷や面積が大きい傷は治るまでの時間も長くなります。縫合したほうが良いときもあれば、軟膏の外用や被覆材を用いたほうが良いこともあります。また、傷跡をできるだけ目立たないようにきれいに治す必要もあります。
まずは、受傷直後は受傷部位の洗浄(水道水で問題ありません)と止血が重要となりますので、よく洗浄してからガーゼなどで強めに圧迫止血(指先などでは、なかなか出血が止まりにくいこともありますが、とにかく圧迫し続けることが大事です) してから、早めに受診していただくのがよろしいかと思います。
凍瘡(=しもやけ)
繰り返される寒冷刺激により、皮膚の小動静脈の血管収縮が起こり、うっ血することで炎症が起こった状態です。手足指の末端にみられることが多いですが、耳たぶや顔面の頬部に生じることもあります。学童に好発しますが、成人にもみられます。初冬や初春に発症することが多く、原因としては気温だけではなく遺伝的要因が関わっていると考えられています。
症状としては、一般的には痛みやかゆみをともなう紫〜紅色に腫脹した紅斑となりますが、手足指先が全体的に腫脹する場合や、環状の紅斑が出現する場合もあります。悪化すると、水疱や皮膚の潰瘍になることもあり、注意が必要です。皮膚の細菌感染症と紛らわしいこともあります。
治療としては、患部の寒冷刺激をさけることや保温を心がけるとともに、末梢血流の改善を促す外用や内服を行います。
褥瘡(=床ずれ)
骨の突出した部位などの皮膚が持続的に圧迫されることによって局所の血流障害が起こり、皮膚や皮下組織が壊死した状態です。一般的には、病気や外傷や加齢による“寝たきり生活”や“車椅子生活”などの活動性の低下や、低栄養、知覚障害などが原因となることが多く、歩行可能な人にでも発症することがあります。また、骨の突出が原因となるため発症しやすい部位があり、仙骨、尾骨部や、おしりの坐骨結節や、大腿上部の大転子部などが代表です。
症状として、初期は局所の紅斑のみですが、障害が進展すると、びらん、硬結を経て、皮膚潰瘍となります。さらに進展すると潰瘍はどんどん深くなり、真皮、皮下組織、筋膜、筋肉を超えて、骨まで達することもあります。また、皮膚表面からみえる部分よりも内部で壊死部位が拡大していることもよくあり、“ポケット”といいます。適切に処置をしないと細菌の二次感染を伴うこともあり、全身症状に発展して、命にかかわることもあります。
治療としては、障害の進展レベルによって変わってきますが、いずれにせよ早期の治療と、障害レベルの評価、今後の治療方針、治療計画と、予防対策が重要になります。範囲が狭い場合はクリニックで対応可能ですが、限度を超える場合は入院治療を勧めることもあります。褥瘡は治癒までの期間が非常に長くかかります(月単位は当たり前、年単位かかることもあります)ので、家族や介助者の協力のもと、根気よく治療していく必要があります。
皮膚癌・悪性腫瘍
皮膚に出来物ができた時や、なかなか治らなかった場合に最も皆さまが心配されるのは、「悪い出来物ではないか?」や「皮膚癌ではないか?」といった場合があるかと思います。
実は皮膚癌や皮膚の悪性腫瘍といっても、たくさんの種類があり細かく分類されています。
一般的には、”癌化した細胞が皮膚のどの細胞由来のものか”によって分類されます。また、他の臓器の癌が皮膚に転移した「転移性皮膚癌」もあります。
種類によって臨床像はは様々であり、良性の出来物や、他の皮膚病変と鑑別が困難なこともあります。気になる出来物がある場合は、悩んでいないで、まずは相談していただければと思います。
通常の外来診療では頻度は高いものではありませんが、その中でも出くわす可能性があるものをいくつか紹介します。
表皮・毛包系由来
基底細胞癌
皮膚癌の中でも、最も頻度が高いものです。毛の根元の部分の「毛嚢」に分化する前段階の「毛芽」を構成する細胞が由来の皮膚癌です。様々な臨床型がありますが、良性の色素性母斑(ホクロ)や、脂漏性角化症(老人性イボ)と似ているところも多く、鑑別にはダーモスコピーが有用です。
転移することがほとんどないため悪性度は高くなく、治療としては原発巣を切除すれば予後的には良好ですが、顔面に好発するため整容的に問題となることがあります。
有棘細胞癌(扁平上皮癌)
表皮の角化細胞由来の皮膚癌です。以下で述べる表皮内の先行病変(日光角化症、ボーエン病など)から進展することが多く、いぼ状に盛り上がって塊を作ったり、内部が崩れてジュクジュクしたりしてきます。また、瘢痕やケロイド内から発生することもあります。
治療としては原発巣の切除が基本ですが、進行すると所属リンパ節に転移してくるため、画像検査によるリンパ節や他の内臓の検索も必要になってきます。
日光角化症(光線角化症)
高齢者の顔面によくみられる1cmくらいまでの大きさの赤い斑で現れます。角化傾向があり、カサカサした皮を付着することが多く、塊を作ることもあります。
角化細胞が表皮内で異常増殖したもので、放置すると年月をかけて有棘細胞癌に進展することがあります。
ボーエン病(Bowen病)
高齢者によくみられる数cmの大きさの円形のわずかに盛り上がった紅色~黒褐色の局面として現れます。表面はカサカサしたり、皮が付着していることが多く、はがすとジュクジュクしたびらん面が現れます。こちらも角化細胞が表皮内で異常増殖したもので、放置すると年月をかけて有棘細胞癌に進展することがあります。
ケラトアカントーマ
中年以降に好発し、1cmくらいまでのドーム状の盛り上がった結節(かたまり)として現れます。その後、急速に数cm大まで増大して、やがて中央部が噴火口状にくずれて、中から角化状の物質が飛び出してきます。その後、数か月の期間で自然に消退していくという変わった経過をとります。組織的に有棘細胞癌と似ているため、鑑別の対象となりますが、本疾患が本当に悪性腫瘍かどうかについては、明確になっていません。
間葉系由来
隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)
真皮内の線維組織球由来の悪性腫瘍で、数cm大の皮下の硬結(しこり)として発生します。皮膚表面が褐色調のこともあります。転移はまれであり悪性度は高くありません。
メラノサイト由来
悪性黒色腫(メラノーマ)
メラニンを産生するメラノサイト由来の悪性腫瘍で、悪性度が高いことから名前はよく知られていますが、発生頻度は高くなく、日本人では5万人に1人程度です。
臨床像は不整な黒褐色病変であることが一般的ですが、いくつかの病型があり、黒くないものもあります。良性の色素性母斑(ホクロ)や、脂漏性角化症(老人性イボ)と似ていることも多く、鑑別にはダーモスコピーが有用です。
リンパや血行性に転移しやすいため、とにかく早期診断、治療が重要になってきますが、特に腫瘍の皮膚深達度(どの深さまで進展しているか)が予後に大きく関わってきます。
原発巣の切除のみならず、所属リンパ節の検索、遠隔転移の検索など画像検査等が必要であるため、少しでも可能性が疑われる場合は対処できる専門施設へ紹介いたします。
当院での治療
基本的に悪性腫瘍の場合は、対処できる専門施設へ紹介するケースが一般的ですが、表皮内の病変である「日光角化症」や「ボーエン病」はクリニックで対応可能な場合もあります。手術による切除以外の凍結療法や外用療法で完治するケースもあります。
また、サイズの小さい基底細胞癌では、転移の可能性がほとんどないため、切除のみで対処できるケースもあります。
陥入爪・巻き爪
“巻き爪”とは爪の側縁が過度に湾曲しており、前方からみるとアーチ形になった爪のことです。 彎曲爪ともいいます。巻き爪を放置すると爪の側縁が皮膚に食い込み、このために爪の側縁の皮膚が腫脹発赤して、強い痛みを伴います。程度が強いと爪囲炎など二次感染をきたしたり、爪の側縁に反応性の肉芽形成を伴います。この状態を“陥入爪”といいます。
原因としては爪の切り方の問題や、靴による圧迫、歩き方や重心のかけ方など、日常生活の習慣から生じることが多いと考えられます。
痛いために食い込んでいる部分を切ってしまうため、さらに側縁が食い込んでいくという悪循環のため、炎症を繰り返すことも多く、悩まされる疾患です。
当院での治療
治療としては、まずは現段階での炎症を治めるため、二次感染がある場合には抗生物質の内服や外用を行ないますが、くい込んでいる部分の爪を外さない限り痛みはとれず、またすぐに再燃してしまいます。
そのために、まずは爪の切り方を指導し、できるだけ側縁を切らずに伸ばしていただきます。
それと並行して保存的治療として、軽症の場合は、テープで爪の側縁に接する部分の皮膚を腹側に引っ張る方法 (テーピング法)、中等度の場合はガーゼや綿球をくい込んでいる爪とその下の皮膚の間に挟み込む方法(コットンパッキング)や、点滴チューブに切れ目を入れて同様にくい込んでいる爪とその下の皮膚の間に挟み込む方法(ガター法)などを行います。
また、爪の彎曲が強くある場合は、保険外治療になりますが爪の湾曲を矯正する方法(ワイヤー矯正)で改善させることもあります。
ワイヤー矯正の詳しい説明はこちらをご覧ください。
なかなか改善せず、何度も炎症を繰り返したり、爪の食い込みが非常に強い場合は、日帰り手術(フェノール法)で根治させる方法をおこなっています。
フェノール法の詳しい説明はこちらをご覧ください。
乾癬
典型的には、厚いかさかさした銀白色の皮をともなった赤い斑が全身に散在する“炎症性角化症”といわれる皮膚疾患の代表で、通常の「尋常性乾癬」や、細かい紅斑が出現する「滴状乾癬」などいくつかの病型が存在します。ただ、症状には幅があり、外用剤で十分コントロールできる軽症例から、全身が赤くなってかさかさした皮が付着する重症例まで様々です。
皮膚の表面では、常に角化細胞が基底層という最も深い層から発生して、徐々に上にあがってきて最終的に角層という最も皮膚の表面の層で脱落するという"再生と脱落"を繰り返しています。これを“皮膚のターンオーバー”と言います。これには通常28~45日かかりますが、乾癬では4~7日と、ものすごくターンオーバーが短縮しています。
病因としては、遺伝的な要因やTh17やTh23が関連した免疫学的な要因や外的な環境因子が絡み合って発症すると考えられています。
当院での治療
乾癬には様々な治療法がありますが、症状に合わせて段階的に行っていきます。薬物治療としては外用剤、内服薬、注射剤があり、その他光線療法があります。これらを組み合わせて行いますが、根本的治療は困難であり、症状をおさえてコントロールしていくことになります。
軽症例にはステロイド外用やビタミンD3外用薬が効果があり、単独または混合剤を用います。また、光線療法(エキシマライト)の併用を行うこともあります。
病変部の面積が大きく、外用剤での効果が得られない中等症以上になってくると、内服薬の併用を考慮します。内服薬としてはビタミンA誘導体のエトレチナート、免疫抑制剤のシクロスポリン、PDE4阻害剤のアプレミラストなどが適応となります。効果は高いものがありますが、副作用もありますので、適宜採血なども必要となります。
クリニックレベルで可能なのはここまでで、それでもコントロールできない最重症例は総合病院や大学病院に紹介して、注射剤(生物学的製剤)の適応を考えます。
多汗症
主に発汗により体温の調節を行っているエクリン汗腺の機能が亢進しており、手のひら、足の裏、わきの下、顔面などの体の一部に限局性に多汗がみられます。多くは情緒性発汗であり、体質や精神的緊張が関与する場合が多くみられます。
当院での治療
「わきの下」と「手のひら」に対しては保険適用の外用剤があるため、まずは試してみます。いずれも交感神経の伝達をブロックすることで発汗を抑制するもので、わきの下は2種類(ゲル状のものと、ふき取りタイプのシート状のもの)、手のひらはローションタイプのものがあります。
また、交感神経を抑制する内服薬もありますが、副作用もあるため注意が必要です。
保険適用薬で改善が乏しい場合や、他の部位に対しては以下のような治療を組み合わせてみます。
当院では保険適用外となりますが、その他の外用剤として制汗消臭クリーム(D-bar)、10%・20%塩化アルミニウム液を用意しています。
なお、わきの下に対しては、症状が重く、前述の治療で効果が出ない場合は、ボトックス注射による治療を考慮します。
ここでは、保険適用である「重度の原発性腋窩多汗症」に対するボトックス注射による治療について説明いたします。(重症度については、来院時の問診で判断いたします。)
「重度の原発性腋窩多汗症」に対するボトックス注射
最も強力な制汗作用があります。発汗を支配する交感神経の伝達をブロックすることにより、発汗を抑制します。1回の施術で、効果は約4ヶ月~半年間持続します。
手順としまして、まず来院していただき、注射の適用があるかについて問診します。
適用がある場合は、施術の方法、効果などについて説明を受け、同意書にサインし、施術日の予約をとっていただきます。
(※同意書をいただいてからの薬剤の取り寄せとなるため、必ず予約をとってからの施術となります。)
施術の方法は、両側腋窩にそれぞれ約20ヶ所マーキングをして、ボトックスを注射していきます。極細の針を使いますので、チクチクした痛みは多少ありますが、通常麻酔は不要です。少し冷却して終了です。施術時間は10分以内です。剃毛してから来院ください。